「青春の冒険」(1957)でのこと

この作品は、小林旭さんが主演の映画で、大人の世界にあこがれる高校生を描いたものです。デビューから間もない頃の出演で、その時の芸名は「清水マリ子」でした。ちなみに本名は鞠子ですが、鞠の字が複雑だったので、単純にカナに替えられたものです。のちに「まゆみ」になりましたが、そのお話はまた別の機会にすることにします。

さて、この作品では当時、同じ年ごろの役柄でしたから、等身大で演じることができました。デビュー作の「月下の若武者」とは違って、セリフも増えましたし、撮影所のみならず初めてのロケも経験して、気持ちも上がりました。ところが、ここではじめて役者としての壁にぶち当たるのです。実際は、壁だなんて大げさなものではなくて、今振り返れば微笑ましくも、お恥ずかしい話です。

それは、主役の小林旭さんに平手打ちをするシーンでのことでした。台本では、旭さんの頬を思い切り叩かなくてはなりません。でも、どうしても叩くことができないのです。だって、怖いでしょう?!デビュー前に、スクリーンで観ていた日活のスターが相手です。それに、それまで一度だって、人の頬を叩くなんてことはしたことが無かったのですから。何回も何回も挑戦して、それでもできなくて、とうとう泣けてきたのです。旭さんは「思いっきりやっていい!」と言ってくれたのですが、当時の私にはなかなか難しいことでした。

それでも役者として、ゼロからスタートしたばかりの頃でしたから、無理もなかったのかもしれません。結局、役に入りきれないから、平手打ちもできなかったのです。でもこの経験を通じて、役者としての覚悟が必要だということを、改めて思い知らされました。だからといって、覚悟がどれほどのものかを思い知ることになるのは、実はもう少し先のお話なのですが…。おかげさまで撮影は、周りのスタッフの温かな支えもあって、なんとか終了しました。旭さんは、ご承知のとおり背も高くて迫力のある役者さんです。それに、性格はとてもさっぱりしていて、撮影現場はいつも良い雰囲気でした。

そんなこんなで、周囲に支えられながら役者としての人生がスタートしました。しかし、まだまだ前途多難。この続きはまたの機会にお話しします。

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