とても食通だった、葉山良二さん。良ちゃんとの思い出には、食に関するものがたくさんあります。いろいろなレストランで食事をご一緒しましたが、中でも印象に残っているのは、「しゃぶしゃぶ」です。当時、溜池に高級なしゃぶしゃぶレストランができたということで、小髙と招待された事がありました。田舎から出てきた私にとって「しゃぶしゃぶ」は、すごくハイカラでおしゃれな料理でした。とても美味しくて、感激したのを覚えています。他にも、良ちゃんは銀座や新橋の高級なお鮨屋さんの常連でしたので、ずいぶんと贅沢な思いをさせてくれました。時には、渋谷にあるご自宅に招かれる事もありました。美味しいお肉をたくさん用意してくれて、日活の仲間で焼肉パーティーを楽しんだ事を、今でも懐かしく思い出します。このように良ちゃんは、サービス精神が旺盛で、優しくて面倒見のよい人だったのです。
日活を離れた後ですが、小髙と私は世田谷の家を新たに買って、一緒に住んでおりました。そこは、大蔵映画撮影所から通りを挟んですぐのところでしたから、撮影の合間に、よく良ちゃんが訪ねてきてくれました。当時も忙しかったですから、昼寝をするのにとても都合の良い場所だったようです。私たちが撮影で不在にしていても、平気で来て「何かスープを作ってほしい」と留守の者に頼んで、自分の家のように過ごしていたとか。良ちゃんと小髙とは気の置けない間柄でしたので、私抜きで2人でお酒を飲みに行くこともありました。
今日は1月3日、良ちゃんの命日。あまりにも早い旅立ちで、小髙も私もとても残念でした。新年明けてすぐのお葬式は、とても寂しく感じたものです。今は夫も亡くなりましたが、今日一日は日活時代を思い返して、故人を偲びたいと思います。