田中邦衛さんの一周忌に寄せて

田中邦衛さんと初めてお会いしたのは、「北の国から」の本読みでご一緒した時でした。邦衛さんは俳優座のご出身で小髙の後輩でしたし、存じ上げてはいたのですが、実際にお会いしたのはこの時が初めてでした。そして最近、日活を振り返る活動をしている中で、意外にも邦衛さんが日活映画に出演されていたのを知って驚きました。小髙とも共演しており、スチール写真も自宅にちゃんと保管してありました。日活時代に全くお会いする機会がなかったのは、とても残念に思います。

ところで、俳優座出身の皆さんは小髙のことを気軽に「尊ちゃん(そんちゃん)」と呼んでくださっている中で、邦衛さんは「小髙さん」と呼んでくださっていました。年齢は小髙よりも一つ年上でしたし、気軽にお呼びいただいてもよかったのですが、俳優座で後輩だったという姿勢を崩すことなく、気を遣われていたんですね。そして、病気療養をして俳優としての仕事ができなくなってしまった小髙を気遣ってか「小髙さんはお元気にしておられますか?」と、お会いする度に必ず声をかけてくださったのです。とても紳士で、礼儀の正しい方でしたね。邦衛さんとお会いすると、温かい気持ちになったのを覚えています。

話は「北の国から」に戻りますが、ロケ地は北海道の富良野市で、役者やスタッフの定宿は富良野プリンスホテルが指定されておりました。ロケ地に前日入りしたある日、夕食には少し早かったのですが、一人でしたし簡単に済ませてしまおうとレストランに向かいました。中途半端な時間でしたのでどなたもいらっしゃらないと思っていたら、邦衛さんがお一人で入って来られたのです。奇遇な事でしたからお互いに少し驚いたところで、邦衛さんに席をご一緒しないかと誘われました。照れ屋な邦衛さんらしく、口を尖らせながら「まゆみさん、ワインでもどお?」って気軽に声をかけてくださったのです。実は、それまで小髙以外の男性と二人でワインを飲んだことが一度もなかったので、正直言って少し戸惑いましたが、せっかくの機会なのでご一緒させていただくことにしました。

ほんのひと時でしたが、邦衛さんとワインをいただきながら和やかに過ごしたのを覚えています。とても貴重な思い出です。ドラマは長期に渡りシリーズ化されましたが、小髙の療養も考慮していただき出番を少なめにしていただいたこともあって、後にも先にも邦衛さんとお食事をご一緒したのはその一度きりでした。ドラマも2002年で区切りがついてから小髙の看病に専念しましたので、その後に邦衛さんとお会いする機会は、残念ながらありませんでした。

邦衛さんがお亡くなりになってから早一年、お世話になったお礼の言葉を直接、伝えることはできませんでしたが、今回このような形で思い出を語ることができて、気持ちが少し楽になりました。気になっておりましたので、本当に良かったと思っております。この年齢になりますと、別れが多くなるのは仕方のないことですが、元気なうちに出逢った方々に感謝の気持ちをお伝えしていかなければならないと思っております。

大鵬さんとの思い出

「巨人・大鵬・卵焼き」といえば、戦後の流行語にもなりましたが、当時の日本人なら誰もが好きだったものの代名詞です。御多分に洩れず、室蘭の実家で一緒に暮らしていた祖母も、大鵬さんの大ファンでした。大鵬さんは北海道出身で、偶然にも私と同じ年。ご縁あって雑誌の取材のため、相撲部屋を訪れたことがありました。人気の代名詞ですから、一体どんな方なのかと、興味津々でした。何より祖母に大鵬さんの話がしたかったので、お会いするのが楽しみでした。

実際、大鵬さんはものすごく体が大きくて圧倒されましたが、横柄なところは少しもなく、素朴で優しい雰囲気の方でした。雑誌の取材でしたから、たくさんの写真が撮影されましたが、中にはお姫様抱っこの写真もありました。今でも、軽々と持ち上げられたことを思い出します。それから相撲部屋では、ちゃんこ鍋をご馳走になりました。人生初のちゃんこ鍋でしたが、見たこともないくらい大きな鍋が出てきて、びっくりしたのを覚えています。部屋中のお相撲さん達が食べられるように、大きい鍋で贅沢に作られていたのですね。皆さんと一緒に、とても美味しくいただきました。ちなみに相撲部屋には沢山の力士が所属していて、とても賑やかでした。部屋の雰囲気がとてもよく、和やかで楽しく、とても印象に残る取材でした。

一期一会ではありませんが、私にとっては貴重な出会いで、大変光栄なことでした。活躍する世界は違いましたが、同郷で、しかも同じ年齢の方が相撲界を牽引しているというだけでも、大変心強いことでした。何より大鵬さんから、たくさんの勇気をいただき、私自身もより一層、頑張ろうという気持ちにさせられたのを覚えています。そうそう、取材の後から大相撲の取組がますます気になるようになりました。今でも大相撲のシーズンになると、必ずテレビで観戦しています。日本人力士がもっともっと強くなってほしいな、と思いながら観ています。それから、大鵬さんのお孫さんの王鵬さん。この一月場所から十両に昇進しましたよね!ますます応援に熱が入っているところです。大鵬さんのような人気の代名詞になれるように、頑張ってほしいと願っています。

次回はまた、日活のエピソードに戻ります。

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